韓国産のワイン【背景・歴史編】

韓国産のワイン【背景・歴史編】

韓国でもワインがつくられていることをご存知でしょうか?

私が初めて韓国産のワインを知ったのは、韓国旅行中のことでした。
韓国は気軽に行ける海外なので、何度か訪れているのですが、ワインという新たな一面に興味をそそられ、次に訪れる時は少し違った視点で韓国を楽しんでみたいと思いました。
そこで訪れたのが、韓国のワイナリーです。

今回のブログでは、皆さんにも韓国ワインの魅力をお伝えしたく、まずはワイナリー訪問前に知っておきたい韓国ワインの概要についてお話しします。
ワイナリー自体の詳細は、次の機会にお伝えしますね。

実はワイナリーに訪れる前にいろいろ調べたかったのですが、情報が少なく思ったように集めることができずに、かなり戸惑いました…

訪問後、ワイナリーの方からいただいたワイナリーマップのおかげで、やっと情報を整理することができたので、ぜひシェアしたいと思います!
日本語での情報が限られている中、この内容が少しでも皆さまのワインを楽しむ幅を広げ、興味を持つきっかけとなれば嬉しいです。


写真:韓国ワイン生産協会のワイナリーマップ
このワイナリーマップのおかげで、とても助かりました!

※用語解説は韓国ワイン生産協会の情報をもとにしていますが、歴史については、韓国のワインコラムや記事から集めた情報です。 正確さにおいては公式の情報と異なる可能性がある点をご了承ください。

 

韓国における「ワイン」の広い定義・韓国ワインとは? 

韓国のワインについてお話しするには、まずその広い定義を理解することが大切です。 私はこのことを知らなかったため、かなり混乱しました。

韓国産のブドウ100%でつくられたワインは「韓国ワイン」という分類に入ります。

ただ、「韓国ワイン」はブドウだけに限られていません

韓国では「ワイン」という言葉広く使われており、100%韓国産の農産物や特産物を原料とした酒類全般「韓国ワイン」と呼びます。
ブドウ以外の果実(桃、りんご、覆盆子〈ラズベリーに似た果物〉、サルナシ〈キウイフルーツに似た果物〉、桑の実など)を原料としたお酒も「韓国ワイン」です。

そのため、「韓国 ワイン」と検索すると、ブドウ酒だけでなく他の果実のお酒も表示されます。ブドウ酒を探されている時は、気をつけてくださいね。

韓国ワイン、国産ワインの違い

韓国産のワインは「韓国ワイン(ハングッワイン)」「国産ワイン(グッサンワイン)」とに区別されています。 

後ほど、韓国のワインの歴史を紹介しますが、その中で「国産ワイン」が登場するため、この違いを理解しておくと便利です。

「国産ワイン」とは、海外から大量に輸入したワインを韓国で瓶詰めしたり、韓国産のブドウと混ぜたりしたワインのことです。

他に「ウリワイン」という呼び方もあるようです。
韓国語の「ウリ」という言葉から来ています。「ウリ」は「私たち」や「自分たち」という意味で、韓国では「ウリオンマ(お母さん)」「ウリチーム」など、親しみや自分たちのものという意味を込めてよく使われます。
そのため、「ウリワイン」は100%韓国産で作られたワインに対して、韓国の誇りや親しみを込めた愛称として使われているようです。

 

韓国のワインの歴史

韓国でワインがつくられているのは驚きかもしれません。

その背景を知ると、もっと深く感じていただけると思いますので、ここで韓国のワインの歴史を振り返ってみたいと思います。

※今回は混乱を避けるため「ワイン」「韓国ワイン」をブドウ酒に限定して話を進めていきます。

 

1973年、韓国独自の技術を駆使したワイン生産が始まったと言われています。

マッコリのような米を発酵させてアルコール飲料をつくっていた韓国では、主食である米で飲み物をつくるのは無駄遣いだと考えられ1965年、穀物統制法により米酒の醸造が禁止されました。

当時の大統領、朴正煕大統領はドイツ訪問中にリースリングワインを飲み、砂と砂利の痩せた土地でよく育つブドウは肥沃な土地で育つ穀物と競争にならないことに着目し、政府はお酒をつくる会社にワイン生産を積極的に推奨します。

 1973年、東洋ビール(現OBビール)がリースリングを輸入し、ドイツのモーゼル地方と気候がよく似た慶尚北道を中心にブドウ園とワイン工場を建てました

これが韓国でのワイン生産の始まりと言われています。

 

【1970年~90年代 企業が主導した国産ワインの黄金期】

1974年に焼酎の酒造会社ヘテ酒造からブドウを原料とした韓国初のワイン「ノーブルワイン」が発売されます。

写真:韓国初のブドウを原料としたワイン「ノーブルワイン」

1977年には、東洋ビール(現OBビール)から「マジュアン」が登場。

写真:1977年当時の「マジュアン」のエチケット


その後、酒造会社が次々とワインを発売。
眞露の「シャトー・モンブルー」、クムボクジュの「エレジアン」、テソン酒造の「グランジュア(スパークリングワイン)」や「アンコール」などが市場に登場し、国産ワインの全盛期を迎えました。

 特に「マジュアン」は、優れた技術力と効果的な販売促進活動によって、瞬く間に韓国の果実酒市場を席巻し始めます。
この時期、韓国産のブドウのみではワイン製造が難しく、ドイツのモーゼルやフランスのメドックなど、ワイン産地から輸入した原液をブレンドするのが一般的でした。その調合技術は高く評価され、想像を超えるほどの人気を博したと言われています。
日本への輸出も行われていたようです。

 

【1990年~2000年 国産ワインの衰退】

 1987年の輸入自由化により、海外ワインが韓国市場に流入し始め、1990年代には国産ワインの需要が減少し、衰退の兆しを見せ始めました。

 

【2000年以降 農家ワイナリーによる新たな挑戦】

 1993年に「地域特産酒」という新たな免許制度が創設され、ブドウ農家によるワイン生産が始まりました。
この制度は、農家が自ら栽培した農作物の消費拡大を図ると同時に、地域特産品を活用して地元経済の発展を促進することを目的としています。従来の酒類製造免許に比べ、酒類製造に必要な施設基準が緩和され、農家が比較的容易に酒類産業に参入できるようになりました。
しかし、韓国の気候条件がワインづくりに適していないことや、ブドウ品種に応じた栽培・醸造の経験不足といった課題があり、生産者の熱意に対して品質が期待を下回るケースも多く見られたようです。

 

【2010年以降 独自ブドウ品種の開発と品質向上】

 政府がブドウ特区を次々と指定し、農林畜産食品部傘下の技術研究機関が改良品種の開発を進める中、農家はワイン醸造技術を学び、コンサルティングを受けることで品質の向上が図られました。
2015年には、農村復興庁が1993年に開発した独自の白ブドウ品種「チョンス」から作られた白ワインがアジアワイントロフィーで金賞を受賞し、その後も継続的に金賞と銀賞を受賞しています。

ここまでが、韓国のワインの簡単な歴史です。

 

韓国は厳しい気候条件や土壌の制約により、国際的に広く栽培されているブドウ品種が育ちにくく、ワイン生産は比較的近年になってから本格的に始まっています。
ワイン生産の歴史は浅いものの、独自の品種を開発し、新しいワイン文化が着実に発展しているようです。
訪れたワイナリーで、いくつかのお勧めのワイナリーを教えていただきましたが、それぞれの主な栽培品種は、独自の品種が多かったです。

チョンスがブレンドされた白ワインを飲んで美味しかったので、 私もチョンスに興味を持っています! 

注目されている韓国独自のブドウ品種
写真 左:チョンス 右:モル


ワインについて知ることは、その国の歴史や文化を知ることにも繋がると改めて感じました。
韓国映画などを通して時代背景をなんとなく知っていたこともあり、ワインを通して新たな韓国の歴史の一面に触れることができ、大変興味深かったです。そこには、韓国ならではのストーリーが詰まっていました。

次は、訪れたワイナリーについてご紹介します!
地域と共に開発されたブドウを育て、ご夫婦でワインをつくり続けている農家ワイナリーです。
私が初めての日本人訪問者だったこともあり驚きがあったようですが、とても温かく迎えていただきました。
どうぞお楽しみに。

 

川元

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