韓国産のワインについては、これまでにもこのブログでご紹介してきました。
まだ現地でしか出会えないことが多いのですが、最近はその個性や魅力に少しずつ注目が集まるようになってきています。
韓国 ソウルの一部のレストランでは、韓国の土地や食文化にこだわったコース料理に、伝統酒や韓国ワインをペアリングとして登場することがあります。
味わいの良さはもちろん、背景にあるストーリーや文化を重視するお店では、こうしたお酒が「韓国という体験」をより豊かにしてくれる存在として選ばれているようです。
しかし、韓国産のブドウを使ったワインは、まだ流通量が少なく、情報も限られています。
調べながら私自身も戸惑う場面が多くありましたが、ワインについて学んできた立場から、できるだけ丁寧に整理したつもりです。
旅先などで出会う機会があったときに、この情報が少しでも韓国ワインを楽しむ手助けになれば幸いです。
今回は「ブドウ品種」に注目しました。
特に注目したい3つの品種をご紹介します。
韓国で育つ個性豊かなブドウたち
ラベルにハングルしか書いていない時もあるので、ハングル表記(韓国語)と英語表記を載せます。
ぜひ、参考にしてくださいね。
<爽やかな白が好きな方にぴったり!>
1つめ:チョンス

【ハングル】청수
【英語】 Cheongsu もしくは Cheongsoo
翻訳アプリを使うと、高確率で「清水」と表示されます。
つい「シミズ」と読みたくなってしまいますが、現地では「チョンス」でないと通じないので、ぜひこの呼び方で覚えてくださいね。
韓国生まれの白ブドウ。
独自の品種であり、質の高いワインが生まれていることから、白ワインではこのチョンスをよく見かけます。
私は、ブレンドを含めて3種類、飲むことができましたが、いずれも、レモンやグレープフルーツのような、すっきりとした柑橘系の香りと爽やかな苦味が印象的でした。
セイベル9110(Seibel 9110)とヒムロッド・シードレス(Himrod Seedless)を交配して誕生した品種で、1993年に農村振興庁国立園芸特作科学院によって開発されました。
もともとは生食用として育てられていましたが、完熟すると実が自然に落ちやすいため市場価値が低く、長い間農家からは敬遠されていました。
しかし、ワインにすると香りや風味に優れていることが専門家の間で評価され、農村振興庁の働きかけもあり、2008年にワイン用ブドウとして生まれ変わった品種です。

<甘い香りに癒されたい方におすすめ>
2つめ:キャンベル・アーリー

【ハングル】 캠밸얼리 もしくは 캠밸포도
【英語】Campbell Early
韓国では「キャンベルブドウ(캠밸포도)」とも呼ばれています。
アメリカで交配された品種で、日本では北海道・岩手・宮崎が主な産地として知られており、日本ワインでもおなじみの品種です。
赤ワインやロゼワインに使われており、韓国でも非常にポピュラーで、生食用としても広く親しまれています。
甘く華やかな香りが特徴で、“フォクシーフレーバー”と呼ばれる独特の香りがあります。
ブドウジュースのような甘い香りとも表現され、ヨーロッパ系品種のワインに慣れている方には、やや個性的と感じることもあるようです。
しかし、甘やかで厚みのある香りに魅了される人も多く、印象に残りやすい品種です。

<まだまだ知られていない注目品種!>
3つめ:モル

【ハングル】머루
【英語】Meoru もしくは Wild Grapes
韓国に自生する野生のブドウの総称で、いくつかの種類を含んでいます。
日本のヤマブドウに近い存在と言えますが、日本ではヤマブドウが特定の一種を指すのに対し、韓国の「モル」は複数の野生種をまとめて呼ぶ、より広い意味を持つ言葉です。
ワインとしては、主に赤ワインに使われています。
ワインでは「サンモル」(산머루/Sanmeoru)と表記されているのをよく見かけます。
韓国の国立研究機関である国立生物資源館(국립생물자원관)ではモルをサンボド、サンモルとも呼ぶことがあるとされ、モルとサンモルは同一のブドウとして紹介されています。
しかし、お酒を扱う関係者に尋ねると、明確に違うようです。
ただ、何が違うかを訪ねると、説明は難しいようでした。
ちょっと気になる豆知識
ただ、何が違うかを訪ねると、説明は難しいようでした。
このように、モルとサンモルについては、学術的な分類と、酒販や伝統酒の関係者の間での捉え方に差が見られるようです。
今後、分かり次第、追記したいと思います。
もし、韓国のワイン関係者に出会う機会があれば、話のきっかけとして聞いてみるのも面白いと思います!
ちなみに、私が使っている翻訳アプリでは「モル」と表示されることはなく、「メル」と訳されることが多いようです。
しかし、日本語での発音は「モル」が最も近く、現地でもこの発音が通じやすいと思います。
私自身はまだサンモルのワインに出会っていませんが、いつかぜひ飲んでみたいです!
[追記]
サンモル100%のワインをいただくことができました!
色調は非常に濃く、香りと後味には青いニュアンスが前に出る印象があります。
タンニン量も多く、甘さを感じさせない非常に引き締まったスタイルでした。
1種類しか飲んでいないため、これがモルの特徴と言えるかどうかは難しいのですが、ひとつの個性としてとても興味深く感じています。
色調は非常に濃く、香りと後味には青いニュアンスが前に出る印象があります。
タンニン量も多く、甘さを感じさせない非常に引き締まったスタイルでした。
1種類しか飲んでいないため、これがモルの特徴と言えるかどうかは難しいのですが、ひとつの個性としてとても興味深く感じています。
ちょっと気になる豆知識
モルと間違えられることも?日本生まれのブドウ
マスカット・ベリーA
【ハングル】머스캣 베일리 에이
【英語】 Muscat Bailey A MBAと表記されることも多いです。
日本で生まれたこの品種も、韓国で栽培されており、記事などで「モルブドウ」「モル系のブドウ」と紹介されるていることがあります。
ただし、実際にはモルとはまったく異なる品種です。
色や香りの印象が似ているのか、かつてそう考えられていた情報がそのまま広まり、定着してしまったことが原因かもしれません。
現在では別品種であることが明らかになっていますが、今でも混同されることがあるようです。
こうした間違いも、ちょっとした豆知識として知っておくと、ワイン選びや会話の中で役立つかもしれません。
まだ知られていないけれど、これからが楽しみな韓国ワイン
いかがでしたでしょうか?
ワインに詳しくなくても、今回ご紹介した3つの品種を知っていれば、韓国ワインの世界を十分に楽しめると思います。
日本ではまだあまり知られていない品種もありますが、どこか親しみを感じられるのが、韓国ワインの魅力かもしれません。
最近では、韓国ワイン※2を「K-WINE」として、K-POPやK-FOODのように世界に発信しようという動きも見られるようになってきています。
※2 K-WINEには、ブドウ酒以外も含まれます。
その一例が、韓国国際ソムリエ協会(KISA)と経済誌が主催する「韓国ワイン・伝統酒ベストトロフィー」という品評会です。
韓国ワイン(ブドウ酒以外も含む)や伝統酒の品質向上と認知度の拡大を目的としたもので、K-WINEの発展を後押しする取り組みといえます。
まだ限られた場所でしか飲めない韓国ワインですが、こうした流れが広がっていくことで、日本でも”K-ワイン”として今後、身近な存在になっていくかもしれません。
どこかで見かけたときに、このブログをふと思い出していただけたら嬉しいです。
最後まで読んでくださってありがとうございました!
韓国ワインに興味を持っていただけた方は、よろしければ他の記事もぜひ読んでみてくださいね。
川元
【注記:このブログについて】
このブログでは、特定のワインをお勧めすることを目的としているのではなく、韓国でつくられるワインを、ソムリエとして学び続ける一人の立場から記録しています。
また韓国では、「ワイン」という言葉が広く使われており、100%韓国産の農産物や特産物を原料とした酒類全般、あるいはその中でも発酵されているお酒を「韓国ワイン」と呼ぶことがあります。そのため、ブドウ以外の果実を原料としたお酒も含まれる場合があります。
このブログでは混乱を避けるため、「韓国ワイン」をブドウ酒に限定して記載しています。