これまでこのブログでは、韓国ワインについて3回にわたって紹介してきました。
日本ではまだ出会う機会が少ないからこそ「一度飲んでみたい」と感じてくださった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、ソウルでその体験ができる、とっておきの場所をご紹介します!
韓国の豊かな食文化を、ワインの視点から体験させてくれる貴重な一軒です。
食から「韓国」を表現するレストラン「Joo052」
ご紹介するのは「Joo052」というレストランです。
お店の名前の「Joo」は英語読みではなく、韓国語の音をアルファベットで表記したものです。
実際は「チュ」と発音し、日本語で「酒」を意味します。「052」はシェフの故郷である蔚山(ウルサン)の市外局番だそうです。
このお店の特徴は、徹底した「発酵」へのこだわりです。
料理の根底にある韓国の食文化そのものを指す「韓食(ハンシク)」の精神。その基礎となる酢、醤油、味噌に至るまで、すべてが自家製です。原料となるメジュ(発酵させた大豆の塊)から手作りし、長い時間をかけて熟成させています。

お酒のリストもまた、料理とともに多様な「韓国の味」を体験できるようになっています。
• 韓国ワイン
• フランスで活躍する韓国人醸造家のワイン
• マッコリや薬酒(ヤクチュ)などの伝統酒
など
観光客向けではない、現地でも希少なお酒が揃っています。

ペアリングの鍵は「テクスチャー」
今回は料理との関係から見えてきた “気づき”を共有させてください。
特に印象的だったのはカササギザメの昆布巻きに、チョジャン(コチュジャンに酢と砂糖を合わせたもの)のソースを添えた一皿とのペアリングです。
選ばれていたのは、キャンベル・アーリーとマスカット・ベーリーAをブレンドした、韓国のナチュールワインでした。

ソムリエの言葉と、ふとした疑問
ソムリエの方からは、「ボジョレ・ヌーヴォーを思わせる軽やかさ」という説明がありました。
確かに、柔らかなタンニンはソースの邪魔をせず、とても合っていたのですが、「ボジョレ・ヌーヴォー」という言葉が少し気になりました。
一般的なボジョレ・ヌーヴォーのイメージとは違っていたからです。

私は言葉の裏側にあるものが気になり、後で調べてみました。
醸造方法に見る「相性」の正体
そこで分かったのは、このワインがボジョレ・ヌーヴォーで用いられるマセラシオン・カルボニックを取り入れ、ノンフィルター(無濾過)で仕上げられていたということでした。
工程を知ることで、ソムリエの方の意図も理解できました。
そして、点と点がつながりました。
韓国料理も多様ですが、今回のような発酵調味料を主役にした料理とのペアリングにおいては、「テクスチャー(質感)」の調和がとても重要であるということです。
• 韓国料理の特徴: 単なる「辛さ」ではなく、発酵調味料による複雑な重層感と厚み。
• このワインの特徴: マセラシオン・カルボニック由来のやわらかさと、無濾過ゆえの複雑な口当たり。
このワインが持つ特有の質感が、発酵料理のボリューム感と自然に重なっていました。
日本も発酵文化を持つ国ですが、素材を引き立てる「澄んだ旨味」を軸とする日本料理に対し、こうした韓国料理には、ワインの質感を調整することでバランスが整うように感じました。
今回の体験は、新たな発見というよりも、これまで触れてきた韓国のワインコラムやワイナリーの考え方が、実感として腑に落ちた瞬間でもありました。
伝統酒と、飲まないという選択の豊かさ
伝統酒のラインナップも印象的で、中にはシェリーのフィノを思わせる味わいもあり、韓国の酒文化の幅広さを感じます。
また、ここでは「アルコールを飲まない」という選択も特別な体験になります。
ソムリエの方がノンアルコールブランドを手がけており、ノンアルコールのペアリングもあります。エゴマの葉を使ったものや、唐辛子を使ったものなど、お酒と同じように韓国らしさを楽しめる構成になっています。
訪問情報
・店名 Joo052(주052)
・場所 ソウル 往十里(ワンシムニ)駅から5分
・ソムリエ在籍
・予算 (2026年4月時点)
ディナーコース 14万ウォン前後
アルコールペアリング 12万ウォン前後
ノンアルコールペアリング 10万ウォン前後
・対応言語 韓国語・英語
・要予約(アプリCATCH TABLE〈GLOBAL〉より予約)
韓国料理とワイン、その現在地
Joo052は、旅先で少し贅沢に、ワインを通して韓国の食の深さに触れたいときに訪れたくなる場所です。
再訪して感じたのは、伝統酒の存在感が増しているように感じた一方で、韓国ワインの提供やワイナリーとの取り組みも着実に続いているということです。
今後どのように韓国ワインが提案されていくのか、そして、その土地ならではのペアリングの進化を、これからも楽しみに追い続けたいと思います!

最後まで読んでくださってありがとうございました!
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川元
韓国産のワイン【江原道 浩川 ノブネワイナリー】
【注記:このブログについて】
このブログでは、特定のワインをお勧めすることを目的としているのではなく、韓国でつくられるワインを、ソムリエとして学び続ける一人の立場から記録しています。
また韓国では、「ワイン」という言葉が広く使われており、100%韓国産の農産物や特産物を原料とした酒類全般、あるいはその中でも発酵されているお酒を「韓国ワイン」と呼ぶことがあります。そのため、ブドウ以外の果実を原料としたお酒も含まれる場合があります。
このブログでは混乱を避けるため、「韓国ワイン」をブドウ酒に限定して記載しています。